主に発電所などに設置される変圧器、遮断器機を格納する電源盤の筐体の構造設計を担当しています。我々のプロダクトはお客様の仕様に合わせた受注生産品で、その構造は一品一様です。そのため業務ではお客様の仕様に合わせ、各チームが連携しながら設計を進めます。
業務の基本的な流れとしては、まず電気計画チームがお客様と電源盤の仕様を決めます。その後、仕様に合わせて構造設計チームで筐体や導体配置等、構造に関わる設計をします。その後、電気配線チームに引き継ぎ設計が完了します。電源盤全体の製造には時間をかけて取り組みますが、私のチームでは通常一人でひとつの筐体をおよそ1か月程度をかけて設計していきます。複雑な構造の場合は1年近くかかることもあります。
現在の構造設計に携わるようになって1年と少し。徐々に図面と実際の組み立ての想像力が近づいてきている実感があり、それを「物の形がわかる」ようになってきたと自分では思っています。たとえば、図面では問題がなくても、実際には手が入らなかったり工具が入らなかったり。言ってしまえば、図面の上でしか実現できない机上の空論。現場とデスクを何度も行き来して経験を積むことで、段々と「物の形がわかる」ようになってきたのではないかと思います。自分が頭の中で描き、図面を引いたものが、実際に組み立てられてできあがっていく場面を見ている瞬間の面白さは、設計業務ならではの魅力だと感じています。
大学院で流体力学を専攻していた関係で、現在の業務でも耐震や力学計算をする際には非常に役立っているのですが、じつは社内では力学専攻はめずらしい存在。何かわからないことがあると別の部署からも相談を受けたり頼りにしてもらったりすることが結構あります。他の日立グループの方から電話がかかってきて、「岩楯さん、これどうやってやったのですか?」と聞かれたこともありました。以前携わっていた業務に関することでお答えすると、それが後日論文の一部になったことも。耐震構造や各種エンジニアリングのことで、自分の意見や支援を求められたこともあり、自分の知見が、職場以外の所でも評価されていたことは、うれしい驚きでした。
小さな頃から図工等、自分でなにかをつくっていくことが好きでした。大学では機械サイエンス専攻で、流体力学を専門的に勉強していたこともあり、風力発電機の実験装置をつくり、そこで翼の設計などをしていました。その時に初めて、“設計”という業務の面白さと魅力に触れ、自分に向いている職であると考えるようになりました。文字どおり“職”に“就”くことが、就職活動だと考えていたため、設計業務に携わるという意志は固かったですね。そしてせっかく仕事にするなら大きいことがいい。日立グループはその点、“モノづくり”の規模やプロダクトの活躍するシーンが非常に幅広く、色々なことにチャレンジできる環境があると思い、志望しました。
もちろん大学院で学んだことは多くの業務に活かせているのですが、構造設計をしているとそれだけでは解決できない課題に直面することも多くあります。さらに構造設計の中でも「耐震クラス」という地震にも強い耐震構造を持つものとなると、本当に難しくて多くの経験と知識が必要になる。それができるようになるだけでも10年かかると言われています。今の目標は耐震設計ができる構造設計者になること。一番の目標は、今の上長です。設計者として経験豊富で、社内でも「困ったらあの人に聞けばいい」と言われているような存在。多くの人に頼られている姿は、憧れる設計者の姿です。